与謝野のICT農業

与謝野のICT農業

〜自然循環農業の科学的アプローチ〜

自然循環農業として、町営の有機質肥料「京の豆っこ肥料」中心の米作りを15年以上推進してきました。環境に配慮した農業として一定の成果が出てきましたが、一方でそれはベテラン農業者の技術と経験に頼ったものでした。新規就農者の拡充など後継者対策を考えると、農業者が培ってきた貴重な栽培技術、ノウハウをいかに次世代へつなげるかは課題でした。
与謝野町はICT農業に出会い取り組むことで、次世代へつなぐ、持続可能な農業の可能性を広げています。

THE SMART GREEN VILLAGE

与謝野 スマートグリーンビレッジ構想

与謝野 スマートグリーンビレッジ構想

「スマートグリーンビレッジ」とは、すなわち「かしこい農村」。ICT(情報伝達技術)や科学技術を使っていろいろな農業課題を解決する取組みを実践し、最先端の農業を目指します。この構想を先導する「与謝野町スマートグリーンビレッジ確立協議会」は、与謝野町内の農業者と最先端の情報と技術に携わる人々が集いタッグを組み、様々な取組みを通じて与謝野町を持続可能な農村にするための協議や活動を行っています。
産官学民一体となった取組みができるように構成は、与謝野町、与謝野町農業再生協議会をはじめとする町内農家、三重大学、信州大学、立命館大学、中部大学といった学術機関、そして民間からは、ソフトバンク株式会社、フューチャー株式会社、株式会社八代目儀兵衛などが参加しています。

与謝野の農業が進化するICTソリューション

SOFIX

〜土の良さを計る物差し〜

土壌評価 A
〜土の良さを計る物差し〜
総細菌数の推移(億個/g)

今までは、化学肥料等を使わない有機農業などでは、「土づくり」はカンと経験に頼らざるを得ず、場合によっては収量が十分に得られない、安定的な生産が出来ない等の問題が指摘されてきました。SOFIXは、土壌中の微生物量や微生物による窒素循環活性、リン循環活性などを数量的に表すことで、従来の技術では困難であった生物的分析を行えるようにして、有機肥料を用いた「土づくり」の科学的な処方箋を出すことを可能にしたのです。
平成27年より、土壌肥沃度分析(どじょうひよくどぶんせき)=SOFIX診断が始まり、立命館大学生命環境学部の久保教授に稲作向けのSOFIX診断を依頼しています。この栽培方法は診断を秋に行い、土壌の状態により「京の豆っこ肥料、堆肥、ミネラル(とれ太郎)」などを散布し、土作りを行うことです。 データベースに基づいた総バクテリア数、全炭素、全窒素、リンなど土壌肥沃土判定(どじょうひよくどはんてい)を行い、土壌の評価はAランクまで上昇しました。

e-kakashi

〜農業IoTソリューション〜

適期作業
e-kakashi
e-kakashi

「e-kakashi」は農場とスマートフォンなどの端末を結ぶ農業IoTソリューションです。農場に設置したセンサーにより環境情報や生育情報を収集、そのデータはインターネット、AIを介し分析されます。農場の温度・湿度・日照及び土壌の温度・湿度等のデータを10分間に1回蓄積・分析し、その結果はスマートフォン等の端末でいつでも確認できます。
今までの農業は、カンと経験に頼ってきたところが大きかったのですが、e-kakashiは科学的に今どんなリスクがあり、どう対処すべきかの根拠を示し最適な生育環境へ導きます。
与謝野町では平成27年より、ベテラン農業者のモデル農場にe-kakashiを設置しています。e-kakashiの分析データは個人のスマートフォン等でも簡単に見ることができ、経験の少ない者でも、中干し、追肥、刈り取りの時期などをデータから予測し、適期作業を行うことができます。併せて設置されているカメラで撮影されたデータは端末に送られ、その場に行かなくても生育状況がわかることはもちろん、高食味・高収量などの判断も可能になりました。
また、栽培支援アプリ「ekレシピ」に農業者が、農場の気象情報と生育段階ごとの農作業を記録しており、その栽培記録は、新規就農者へいつでも継承できます。
農業者、それに携わる関係者は、農業を次世代へ引き継ぎ、農業で地域の暮らしを守る、与謝野町からおいしいお米を届け続けたいとの思いで取り組みを進めています。

LPWA

〜低消費電力無線通信〜

位置情報
LPWA
LPWA

LPWA(Low Power Wide Area)とは、低速ネットワークで、なるべく消費電力を抑えながら遠距離通信を実現する通信方式です。そのLPWA網を与謝野町全域(108平方キロメートル)に整備する一方で、センサーを農業者の軽トラックに設置し膨大な位置情報を取得、物流の改善策を農業者と開拓しています。平成30年1月から取り組みを始めて約10ケ月間で約250万件もの位置情報が取得でき、現在も引き続き収集を行っているところです。農業者の減少が予想される中、IoTを活用し農産物の物流、作業の改善、効率化を目指すことは、農業者の労働力不足の改善につながります。
なお、LPWAついては、平成29年度総務省情報通信白書(※6)で5Gなどの超高速なネットワークに加え、LPWAによる低速なネットワークを用途等によって使い分けることで、ワイヤレスで様々な通信ニーズに対応していくことが期待され、新たな通信インフラとして今後普及していくとみられています。現在のところ自治体エリア全体をLPWAでカバーしている地域は少なく、農業支援以外の活用も含め、可能性は広がります。

LPWA

ICT農業で
農業技術の継承にも貢献

農業を守ることは全国的な課題となっており、ICT農業は新たな就農支援として、新規就農希望者に農業技術を見える化し、継承するため、日々データを収集、分析しています。
若年層や新規就農者に向けて、スマートフォンから簡単に情報が得られること、またある種のゲーム感覚で挑める農業は新たな可能性を示しています。
このように、与謝野町はICT農業で次世代への農業技術の継承にも貢献し、農業を守り、地域の暮らしを守る取り組みを進めています。